「承認欲求」から「行動評価」へ
補足:Feb 17, 2021にRevueで書かれたテキストです。1年経ったので、振り返りテキストは書きたいと思ってます。
Clubhouseを自分なりに使ってみて感じたことを書き残してみます。忙しい人のために、端的に言うと「オンラインにおける真摯な行動が、巡り巡って自分の価値に繋がってくるようになる」。1年後ぐらいに答え合わせしてみたい。
改めてClubhouseを使ってみて思うこと
とにかく発信者に対して数字的な評価が直接的に返ってこない。「いいね」がない。コメントもない。Amazonや食べログのような、☆の加算による5段階評価もない。ここが新しいポイント。
これまではなにかしらの評価数をユーザは参考にしてました。Twitterにおけるリツイートの数しかり、ヤフーコメントの量しかり、食べログの点数しかり。それがない。あるとすれば、ROOMを開いた際の参加数だったりしますが、実のところ参加人数はそのROOMが終われば毎度リセットされます。
フォロワー数もありますが、積まれた数字は見ためには大きくても、実質的な価値はその後のエンゲージ、例えばその人のライブに常に参加してくれるかどうかで常に変わるので、たぶん先々は大きな意味を持たなくなる。たとえは悪いですが、音楽における大ヒットで何百万枚も売ったからといって、その後に同じアーティストが出す作品が毎度その枚数を保証されるわけではないですよね。そもそもTwitterだって買えるフォロワーに意味はないですし、Instagramのいいね数は不可視になりましたし。
Clubhouseは、ほんと表向きの数字を意識させない仕組みになってる。ROOMを話している際に、そのROOMの参加人数とか、サービス側としては出しそうになるけど出してない。ROOM参加者は、画面をスクロールさせればなんとなくの人数はわかるけど、そんな計算してられないしね。
たとえフォロワー少なくてもライブの評価が高ければ、ライブ番組の視聴数はうず高く積まれていく。もちろん視聴数増加の加速度をつける意味でフォロワー数の影響はゼロではないけど、あえて大したことではないって言い切ってみたい。Clubhouseにおいては「フォロワー増やす方法」とか、「相互フォロワー」とか、微塵も意味ないと考えてます。
これ、肥大化した承認要求へのアンチテーゼにもみえるんですよね。自分だけの妄想かもしれないけれど、ユーザーの承認欲求よりもプラットフォームからの「行動評価」が今後大事になってるのではないかなと。
「行動評価」とは何か
Clubhouse上でいうならばコンテンツ在庫を増やす行動、「ROOMを開く」「信頼できる人をモデレーターにする」「他ユーザをROOMに招待する」などなど、数字で可視化はされない行為に対する評価です。
これ、別にClubhouseに限った話でなく、いまどき大抵のサービスでは行動ログが残り、そのログを教師データにしてユーザとコンテンツをマッチさせるのが肝ですが(ちなみに自分は、これができてないサービスは今時伸びるはずないと思ってる派。全体在庫の更新順表示がユーザにとってなんの意味があるのかと思ってる派)、この「マッチングのもとになる行動ログ」が、可視化された数字よりも重要視されていく。
Clubhouse上の行動評価について自分の経験で言えば、自分は登録時に、電話帳に登録してあった連絡先をバックアップした上で全部消してから登録しました。その電話帳のデータをどう使うか不明瞭ではあったので。そのためか、同時期に始めた人と比べると、招待枠が増えるペースが極端に遅い。3日たてば3枠増えるってClubhouse上で枠が増えてる人に言われたりしたんですが、少なくとも自分は増えませんでした。遅れていきなり5枠増えましたが、現時点でそれっきりです。
プラットフォームにしてみれば、自分の持つ他者の情報というのは美味しい情報なわけですよ。だって、自分の個人情報ですらプラットフォームが使い回すことを最近はNGにしている状況下で、その人の許諾で他人の電話番号を渡されちゃうんですよ。使い捨てが容易にできるメールアドレスより、よっぽど重要な情報を。個人の特定がメールアドレスより確実だし、変えられる情報とはいえそんなに簡単に変わらない。携帯番号を毎年変えますか? 携帯番号を渡すという行為は、たぶん行動評価額も高いのではと考えてます。
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現時点で多くのサービスに実装されている「肥大化した承認要求を利用した仕組み」は、注目を集めたもん勝ちの構造になっています。そしてその数字が権力を持つ仕組みなので、その仕組みを利用したステマやらなんやらができる。それは構造的にまずい。一番極端な例はトランプ大統領を生み出したことともいえると、個人的には思ってます。
なので、その反省から行動評価を効かせていくサービスが増えてくるとも考えていて。例えばGoogleマップ。☆による評価はできるけど、その数の評価は、やりようによってはいじれてしまう。でも、たとえ☆が少なくても、「その時間帯にその場所に人がどれぐらいいるか」も評価になる。芸能人がいようが一人として評価される。そんなGoogle マップも、自分が行ったことあるお店と似たようなお店を示してくれるようになっている。これはこれで行動評価です。
そして、Clubhouse含めていろんな行動評価ベースのサービスなりメディアが増えることにより、注目重視に肥大化した承認要求ベースの仕組みや数字で可視化された評価経済が吹っ飛ぶトレンドがやってきて、より行動評価が重視される流れが来るのではないかと考えてます。
ただ、一つ怖いところもあって、その行動評価の胴元自体は特定のサービスが担っていること。どんな場でも、その場を開催している胴元が主導権を握っているのは、当たり前と言えばそうなんですが、誰もがサービスを利用しうる状況において、「法とその場のルールのバランス」は、別に直近のClubhouseに限らず、昔からあらゆるサービスでずっと議論されている状態。使う側はその状況を認識しながらそれぞれのサービスを使わなければならないと思います。
その解決策と言われれば、ビットコインのように非中央集権な仕組みで行動評価が認証されるようになればいいんですが(例えばTwitterはバードウォッチを試してる)、現時点ではもうちょっと時間がかかるかなというのが自分の認識です、が、それでも流れ自体はこの方向に行くと信じてます。
(編集担当:坪井 @YashinNoMeisou )
2021/02/17 初出
2021/12/23 OGP用に適当な写真を添付
2022/11/22 RevueからSubstackに移動